看護の知恵袋:感染対策のツボ新型コロナウイルス感染症対策~施設内クラスターを防ぐために~
【Vol.171夏号】2022年8月25日
新型コロナウイルス感染症が流行して以来、愛媛県内では60を超える医療・福祉の施設でクラスターが発生し、1300名以上の感染者が報告されました(2022年4月時点)。施設内でクラスターが発生すると、感染者の不利益だけでなく、他者や施設機能への影響も少なくありません。患者や入所者が感染者となった場合は、施設内での療養が基本となるため、対応する職員は自分が感染しないかとの緊張感で疲弊し、離職・休職する者もでてきます。今回は施設内のクラスターを防ぐために、実際にクラスターを経験した方や、えひめクラスター対策班として活動した方の話を紹介します。
【ツボ1】施設内に持ち込ませない
多くのクラスターは、職員や施設利用者(患者や入所者、利用者)による持ち込みから始まります。私生活での行動や体調管理が大切です。また持ち込まれなくても、職員同士の食事会が原因で複数名が就業制限となり、職員不足から病院機能に制限せざるを得なかった事例もあります(外来診療や入院受け入れの制限)。
持ち込みのきっかけ
- 職員や施設利用者の体調管理ができていない(体調不良にもかかわらず就業した職員がきっかけの事例が複数)。
- 職員や施設利用者が私生活での感染回避行動が不十分で感染した(手指衛生やマスク着用、3密回避が不徹底)。
- 施設で定めている感染対策のための就業規則を職員が把握していない、または遵守できずに感染した。
- 他施設から転院・転所してきた利用者や、救急車で運ばれてきた交通事故の患者が感染者だった。
- 面会者が施設内で利用者とマスクなしで会話や食事をした。
【ツボ2】施設内で拡大させない
新型コロナウイルスを持ち込まれても、施設内での感染対策が十分であれば拡大を最小限に抑えることができます。例えば、体調不良の職員に対し、全例検査といった過敏な対応は必要ありません。万が一感染者であったとしても、サージカルマスクを正しく着用し、手指衛生を正しく行い、黙食や休憩時の時間や場所を別にすることを徹底すれば、感染リスクは低減されます。職員だけでなく利用者へも協力を求め、感染経路を遮断することが大切です。
拡大の原因となるきっかけ
- 休憩室や更衣室、食事時、喫煙時などマスクなしの会話があった(お互いに注意しない風土も)。
- 職員が手指衛生をしないか精度が十分ではない。また、利用者に手指衛生を促していない。
- 職員が手袋やエプロンを着用しているが、適切な交換がなく複数の利用者を続けてケアしている。
- 環境消毒時、拭き取りの布が乾いている。あるいは拭く場所や拭き方が理解できておらず効果的ではない。
- 聞こえの悪い利用者に、耳元で大きな声で話しかけた(お互いにマスク着用であっても感染リスクあり)。
- 利用者のマスク着用ができない。また、食事時は対面に座り、パーテーションの使用もない。
- 施設内で感染者が療養継続しているが、ゾーニングや個人防護具の着脱が適切ではなく職員が感染源となっている。
【ツボ3】感染対策の日常化と教育
感染対策は、クラスターが発生してから行うものではありません。日頃から、手指衛生や個人防護具の適切な使用、環境整備などを業務として行うことが、利用者や自分自身を守ることになります。しかし、えひめクラスター対策班活動のなかで、施設管理者から「感染対策を具体的にどうしたらいいか細かいところまでわからない」「職員への教え方がわからない」といった相談が多くあり、現場での教育にたいへん苦労されていることがわかります。このような悩みには、感染対策を専門とする感染管理認定看護師(愛媛県内登録者38名)へ相談いただくことをおすすめします。
愛媛県看護協会では「リソースナース人材活用」として、専門性のある看護師を講師として施設へ派遣するシステムがあります(講師料は原則無料)。感染管理認定看護師が、みなさんのご施設で手指衛生、個人防護具の着脱、環境整備から新型コロナウイルス感染症対策など、ご希望のテーマにそった研修会や施設内ラウンドなどを行いますので、ぜひご利用ください。
(編集:東予感染管理サークル)
東予感染管理サークル(Toyo Infection Control Circle:TICC)は、地域の保健医療福祉施設における感染管理教育の支援を目的として、東予地域に在籍する有志の感染管理認定看護師によって感染対策セミナーを中心とした活動を行っています。